土曜日の夜、先生に朝までに小説を書くようにと言われた。
3行でもいいからと。
次の日、僕は先生に書いた小説を見せた。
タイトルは「すべての女がメイドになる」
内容については、いう必要もあるまい。
そういうことである。
この小説をもとに先生と話をした。
その中で特に印象深かった先生の言葉がある。
「童話『うさぎと亀』で伝えたいことは、うさぎの視点なら『なまけるな』、亀の視点なら『地道に続けることが大事』。それが根っこであり、そのシンプルなことを伝えるためにああいう物語になった」
それを受けて僕は質問をした。
「『うさぎと亀』の話は、その根っこが最初にあって、それから物語ができたんですか?それとも書いていくうちに、伝えたいことができたんですか?」
先生は、
「伝えたいことがなかったらどうなる?」
「文字がならぶだけですね」
「うさぎと亀」の話を聞いて、僕は先に根っこを作ることの大切さがわかった気がした。
根っこはとても単純なことでもいい。むしろ、単純な方がいいのかもしれない。
大事なのは、根っこがあることであり、根っこがあって、ストーリーが出来上がっていくことだ。
僕は、「すべての女がメイドになる」を振り返り、根っこがないことに気づいた。
このまま書いていては、いずれペンが止まる。
僕は、この小説の根っこを考えることにした。
でも、浮かんでこなかった。所詮は、キャッチーな設定で遊びたかっただけなのかもしれない。
この作品は、作品にならない。
ゲームセット仕掛けていた。
今の仕事を辞めたら、短編を仕上げていこうと決めていた。
でも、短編にだって、良い作品には根っこは必ずあるものなのだ。
だとしたら、短編を作ることも大変なことだ。
僕は短編にたいしてもくじけそうになった。
でも、ゲームセットはまだはやい。昨日、僕は根っこらしきものが思い浮かんだ。それがはたして、根っこになりえるのかわからない。でも、もう少し「すべての女がメイドになる」を進めていこう。
今僕は、根っこを探したいと思い始めている。