ダートのコンディションは最悪。
雨が2日連続で振りっぱなし。
地面はぐちゃぐちゃだ。
タイムは思うようにでない。
これから、この日、4発目の走りへと向かう。
僕は、教えてもらった新たなテクニックを整理出来つつあった。
意識するは、ブレーキとアクセル。
ブレーキはだん!だん!だん!と思いきり、アクセルはかかとをつけてから丁寧に踏んでいく。
思い描いていたとおり、これが出来ればタイムは縮まる。
僕は確信していた。
スタート。
直線で思いきり加速。
コーナー手前、ブレーキを踏むラインまできた。
だん!だん!だん!
そこから、足はアクセルへ。
思いきり踏んじゃだめだ、じょじょに、じょじょに。
そして、コーナー真中がきた。
ここで、思いきり、
踏む!
ずごごごごぉぉ!!
滑りながら、外へ車は向かう。
左へ左へコントロール。
次のコーナーでも真ん中で思い切り踏む。
体に圧力がかかる。
その圧力を車とともに僕は切り裂いていく。
前へと突き進んでいく。
踏めている。
僕は確実にアクセルを踏めているぞ。
そして、最終コーナー。
ここでも、思いきり減速してからインへ。
真ん中で思い切り踏んで、あとはゴールまで突き進むんだ。
いった!
手ごたえがあった。
今までの走りとは違う。
踏めた。
踏めていた。
アクセルを踏めていた。
でも、無理をしたわけじゃない。
アクセルを踏み、かつ車をコントロールできていた。
「タイムは!?」
僕は助手席のyoshihikoに聞いた。
タイムを聞いた瞬間、叫んだ。
言葉にならない咆哮。
前回のタイムから3秒もタイムが縮まったのだ。
やった!
タイムが縮まったからうれしいわけじゃない。
轟音が鳴り響くスピード。その領域の中で車をコントロールすることが出来た。
そして、車は自分自身との闘い。
30分前までの自分から僕は大きな進化が出来た。
これらの証明を数字がしてくれたのだ。
自分が思っていた以上の記録となって。
だからうれしかったんだ。
その後、先生の助手席に乗った。
先生の走りの技術を盗む時間。
相変わらず、先生の走りはすごい。
壁にぶつかるんじゃないかというぎりぎりのところまで、コーナーを攻めていく。
ものすごいスピードで。
そんな中、僕は先生の使っているテクニックに1つ気づけた。
さっそく、自分の番で試してみたら、タイムがまた1秒縮まった。
効果は確実に出ていた。
また、うれしかった。
どんどん車と一体になれている。
一体になって、世界を突き抜けようとしている。
興奮しっぱなしだ。
気持ち良い。
最高だ。
この日のベストタイムは29秒88。
初めての走りから5秒も縮められた。
でも、まだまだ走りは荒い。あそこもここもと無駄をたくさん感じている。
今日、学んだブレーキとアクセルの使い方をもっと向上させていけば、その無駄はどんどん削れていける。
そして、もう1つの課題は、コーナーでインを恐れずに攻めること。
思いきりいっていいんだ。
思いきりインにいき、またアウトに。そして、インに、また、アウトに。
僕はこれまで綺麗にコーナーを曲がろうと意識しすぎていた。
大胆にインを突いてから、細かく修正すればいいのだ。
その方が安全なのだ。
なぜなら、アクセルを踏めば踏むほど、曲がり切れずに外に車をぶつけてしまう危険性が増すからだ。
ぼくも前に一度車を曲げきれずに外にフロントをぶつけてしまった。
大切なのはインに攻めていくこと。そして、細かい修正だ。
車を振り回していく。
そのためには、もっともっと車と一体となる必要がある。
恐怖を感じているうちは踏めない。
恐怖に麻痺してしまっても踏めない。
車と一体となった感覚が増したとき、僕はもう少しだけアクセルを踏めるようになる。