2007年 03月 24日 ( 1 )

バカボンドで振りかえるこの1年

年度の終わりを迎えるこの時期、
僕は『バカボンド』を読み返す。
バカボンドは、僕の人生の参考書であり、思い悩んでいるときはすぐに読み返していたことを、先生の言葉が思い出させてくれたのだ。
「自分と戦うのか、戦わないのか、この1週間で決めるんだ。『バカボンド』を読み返してこい」
そう言われたのが先週末の出来事。
それ以降、仕事から帰っては、バカボンドに読みふけっていた。

バカボンドは、宮本武蔵が剣の道を究めようとする漫画だ。
宮本武蔵というと、強い剣豪というイメージを持つ人が多いと思われる。
この漫画も序盤から武蔵が野武士を倒すシーンがあり、武蔵の強さが印象付けられる。
そう思わせておいてこんな台詞が出てくるのだからこの漫画は面白い。
坊主が武蔵に言った台詞だ。

「お前に触れたら切れそうだ
そうやってまるで刃物のように
神経をとがらせ
人を寄せ付けないのは
人が怖いからだ
お前はこの村で一番弱い」

強さばかりを追い求めて、勝負を仕掛けていく。勝ちを求めていく武蔵。
それは、彼が人を恐れているからだった。

そんな武蔵に僕は感情移入する。
僕は思い出した。
僕は、常日頃、不安がつきまとい、怯えていることに。
今も不安はつきまとっているというのに。
けれども、僕はその事実に目を向けることをしなくなっていた。
不安から逃れるよう、そのためにあがこうとかいった必死さが薄れていた。
その必要がなくなったから?
それとも、自分自身を見失っている?

武蔵は、自分が弱い人間であることに目を向けずに、強さばかりを追い求めていた。
強さを確信するための勝ちを求めていた。
僕も強さを求め、勝ちを求めていた時期があった。
その執着が今は薄れていることに気付く。
それは良かったことなのだろうか?
なぜ、執着が薄れていったのだろうか?

その答えは先生とのメールのやりとりにあった。

>先生へ
前回のメールで言葉足らずなところがあって、昨日、僕が目指すべき道は武蔵じゃないと実感したんです。

武蔵やジョーに憧れていたけど、感情移入できる部分もすごくあるけど、かれらは剣やボクシングのほんの一部分しか楽しめていないし、破滅的な生き方にはもう憧れなくなっちゃいました。

かといって彼らに幻滅しているわけではなくて、やはり感情移入できる存在ではあるんです。進むべき道じゃなくなっただけであって。

でも少年の気持ちをもつこと、大切ですよね。編集部にいると、仕事しながらその部分をどんどん育てられるって感じます。今の環境を大切に思って仕事に取り組んでいきたいです。



>koukiへ

お疲れ様。
仕事に対する姿勢がバツグンだね。

武蔵の事も了解した。

「本物の剣の道」とは「人を殺すための剣」ではなく「人を生かすための剣」だし、それは「武蔵、ジョーを超えて初めて見える道」でもあるし、それは「覚悟が出来るまでの道」か「覚悟が出来てからの道」かという差となる。

ゆえにいつも「破滅的な生き方」をベースにした「人を殺す剣」とは「破滅への道」であり、終わりはいつも「死」となるが、「人を生かす剣」に例えられる「生きるための道」の終わりは常に「生」であり、それは破滅への道の終わりから始まる。



このとき、僕は武蔵流の生き方に別れを告げたのだ。
しかし、僕は一つ大きな過ちを犯してしまった。
バカボンドという漫画の存在を僕の心の奥底に沈めてしまったことだ。
破滅的な武蔵の生き方には決別をすべきでも、武蔵の覚悟が出来るまでの道のりからは、目を背けてはいけなったのだ。
目を背けずに覚悟ができる道のりを実践しようと思いながら生きていたら、成長の速度はまた違っていただろうに。
けれど、僕は日々を生き抜くだけで精一杯だった。
先を見ることもできず、一日一日を消費していた。

バカボンドに話を戻そう。
バカボンドは宮本武蔵の強さを描いた漫画ではない。
自分自身を見つめ、自分自身と闘おうとする男の心の成長を描いた物語だ。
だからこそ、この漫画には共感できる言葉が数々書かれている。


「そろそろ己を眺めてみたらどうだ」

「どんな剛の者でも真剣勝負は怖い。
じゃがその恐怖から目をそらさずに受けとめ
それを傍らにのけておくことができる
それが本当に強い者じゃ」

「見まいとすればますます心とらわれる。
一枚の葉にとらわれていては木は見えん
どこにも心を留めず見るともなく全体を見る
それがどうやら見るということだ」

僕は何も見ようとしない人間だ。
1年前から分かっていたことだし、今もそうだ。変えることできずにいる。
他人から目を背けてきた。
他人を知り、自分がいかにちっぽけな存在であるか、感じてしまうのが怖いからだ。
目に映るからものから心を背けてきた。自分がいかにみっともないことをしているのか、知るのが怖いからだ。

「技の研鑽はすばらしいが
心の中は“我”のみ。
『相手に勝ってやろう』
『己の力を』『強さを』『存在を誇示したい』
『俺を見ろ』と。
そんなことのために剣はあるのか?
我々が命と見立てた剣はそんな小さなものか?
我が剣は天地とひとつ。
故に剣は無くともよい」

どの言葉も僕の心に突き刺さる。
僕はまさにそういう人間だ。
相手に勝つとか、自分の力を誇示するとか、そんなちっぽけな思いにばかり振り回され、その思いがこの1年で少しは薄れたかもしれないけど、肝心な決意をしなければ意味なんてない。
だからこそしよう。

自分を眺めみて、振りかえる。
自分自身の心の弱さに負けず、積極的に自分にプレッシャーをかける。
相手と闘う前に自分自身と闘う。
そして、自分を劇的に成長させていくぞ。
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by postmanda | 2007-03-24 13:03